「専門家ではない一般的な目線に近い感覚の支援者」として、様々な内容のイベント運営や「よなきべや」運営に始まり、新たな取り組みとして「OKAYAMAこそだてマップ」の作成に踏み切った「チョウタラの樹」代表の杉原美帆さんに、ご自身のキャリアや事業内容についてお話を伺いました。

プロフィール

チョウタラの樹
代表 杉原美帆さん

倉敷市出身・岡山市在住。一児の母。これまで26カ国を巡り、ローカルコミュニティや文化への関心を深めていく。コロナ禍での壮絶な妊娠・出産を機に、自分自身が感じた悩みや歯がゆい気持ちを少しでも解決できたらと考え、2023年2月に「チョウタラの樹」をスタート。

未経験分野で、夢だった「居場所」づくりを

―子育て支援の分野は新たな挑戦なんですね。なぜ「子育て支援者」という仕事を選んだのでしょうか?

杉原さん:
元々日本史が好きで、学芸員を目指して大学では歴史学を専攻しました。卒業後はアートや文化にのめり込み、各地を旅しながらさまざまなローカルコミュニティを巡りました。「子育て支援」という分野に振り切ったのは自身が当事者になってから。初めての妊娠は壮絶で、コロナ禍も重なり長期的な産後うつにも悩まされました。振り返っても出産前後は本当に辛い期間でしたね。行政が運営する子どもセンターに何度か行ってみたものの、やっぱり合わなくて。今でこそ民間で子育て支援をしている方は多いですが、当時は殆どいませんでした。

検索しても欲しい情報に辿り着けず、外に出ても安心してリフレッシュすることもできず。経済的な不安に加えて、社会から切り離された様な孤独感に苛まれました。そんな経験から「赤ちゃんを安全に遊ばせながら、親自身も安心してほっと一杯のお茶を飲める場所が欲しい」と願った、新米ママとしての切実な思いが原点なんです。

―未経験の分野にも関わらず、ゼロからの居場所づくりに挑戦されていますね。どんなきっかけがあったのでしょうか?

杉原さん:
初めての子育てがコロナ禍ということもあって、何にもつながれない孤独と不安は非常に辛かったです。そんな時、友人同士で集まったママ会で「子どもを見ながらお母さんもお茶片手にゆっくりできる、話せる場が必要だよね」との共通の想いを知りました。「いつか自分も自分だけの場所を持ちたい」と考えていたこともあって、「ないなら自分で作る!」と決意。以前から使い道の構想を練っていた自宅の倉庫をスペースとして開放して、同じように困っている親御さんに使ってもらえる形にしよう!と思い立ち、息子が生後半年の頃から起業に向けて動き始めました。

全国初リアル「よなきごや」をスタート

―「チョウタラの樹」さんと言えば、民間で全国初となる「よなきごや」(※)という印象をお持ちの方も多いと思います。改めて事業内容を教えてください。

杉原さん:
1つめはレンタルスペースの運営です。基本的に24時間使うことができます。写真展やライブ会場など幅広い目的で自由に使っていただけます。ご事情がある方の休憩場所として夜間も使える「よなきべや(※)プラン」は、今後ご利用いただきやすいよう更にアップデートを予定しています。どうぞお楽しみに。
※チョウタラの樹では、原作へのリスペクトから「よなきべや」としています。

2つめがイベントの企画運営です。現在は定期開催しているものメインではありますが、これまで様々な分野のプロの皆さんの協力によって、多岐に渡る内容の企画を実施してきました。どれも赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまでの幅広い年齢の方が楽しめる内容となっています。シンガーソングライターの沖瀬さやかさんと一緒に、出張リトミックユニットとしての活動も。毎月のスケジュールはインスタグラムをご確認ください。

3つめが「OKAYAMAこそだてマップ」の運営です。地域の親子で行ける場所や民間の支援者をまとめ、小さいながらも確かに日々励まれる支援者の顔や思いを可視化することを目的としています。利用者が自分に合った支援を選べる「顔の見える支援」の実現を目指します。

―こういう媒体を求めていました!「OKAYAMAこそだてマップ」はどんな経緯で始まったのですか?

杉原さん:
チョウタラの樹の運営を始めて、改めて「支援が本当に必要な人に必要な届いていない」ことや「支援者側が疲弊し、運営も困窮している」ことが実体験としてわかってきたんです。それぞれの支援者が志を持って運営しているものの、支援施設のある地域での近くで赤ちゃんの悲しい事件が起きてしまったり。行政が運営するSOS電話で心が折れてしまったお母さんの話などから、現状の支援だけでは届かない層へのアプローチと、活動に励まれている方々の人柄や思いが見える「顔が見える支援」の重要性を痛感。

そこで「OKAYMAこそだてマップ」をその媒体と位置付けました。せっかく支援者が増えても情報は埋もれがちで、膨大な量から自力で探すのはとても大変です。「検索しても探すことができず、疲れて諦めてしまう」という声も聞いています。支援者と利用者の橋渡しになることを期待しています。

―今年1〜3月にクラウドファンディングにも挑戦されたんですよね。

杉原さん:
オープン当初から「やってみたい」という構想はあったのですが、READYFORの岡山パートナーが友人だったこともあり、昨年の夏からあれよあれよと話が進みました。初めての挑戦だったのですが、有難い事にファーストゴールを1ヶ月前に達成。セカンドゴールとして掲げた目標も無事達成し、大勢の方の想いを受けて163%まで数字を伸ばすことができました。改めて応援いただき本当にありがとうございました。こうして実現させることができて嬉しく思います。

お茶を片手に多世代がつながれる場に

―関わる方や利用者のリアクションはいかがですか?

杉原さん:
「チョウタラの樹」のコンセプトとして、「あかちゃんを含めて誰もが集える場所」を目指しています。元々「チョウタラ」は、ネパールにある「大きな菩提樹」を意味していて、誰でも・どんなことでも受け入れてくれる存在です。実際、各イベントの参加者は年齢も性別も、個々の事情もさまざま。「苦しんでいるママを救う」という限定的な視点ではなく、あらゆる人々を受け入れるインクルーシブな居場所です。そんな“間口の広さ“が一歩の勇気につながると言っていただけます。

また、イベント参加者から「実家のような安心感があった」「参加者みんなで子どもを見ている感覚だった」「いつの間にか自分もイベントに集中していた」など、多世代交流で自然と子どもたちが守られている空間が生まれています。子どもだけが楽しい場ではなく、参加者みんながゆるりとお茶を楽しめる場づくりを引き続き継続していきたいです。

「場所だけでは不十分」という気づき

―岡山の子育て環境や家族の形、地域コミュニティがどうなってほしいという想いがありますか?

杉原さん:
「よなきべや」の運営を始めて利用者との関わりを重ねていくうち、「物理的な”場所”を提供するだけでは不十分」という壁に当たりました。本当に必要なのはその先の「心のケアやパーソナルなつながり」が絶対的に必要だと感じています。そうした経験を経て、場所運営だけでなく「OKAYMAこそだてマップ」という新しいプロジェクトへ踏み出しました。

現在の日本では社会構造上、母親が極度に追い詰められてしまう場面も少なくありません。ですが、つながりやすい民間がセーフティネットの役割を担うのであれば、自助努力で運営していくには限界があります。そうした厳しい現実を「よなきべや」と「OKAYAMAマップ」で打破したい。利用者と支援者の、お互いのあたたかさを感じられるリアルな声と現状を吸い上げていきたい。親御さんたちの切実な声を行政へ届ける役割も果たしていけたら。そんな構想もあります。その先で、必要な情報に繋がれず困ってしまうという、これまでと同じ苦しみのサイクルを私たちの代で断ち切り、次世代の人たちが子育てしやすい環境が作れていけたら、そんな風に願っています。

―岡山から新たな子育ての常識が生まれそうですね!今日はありがとうございました。

概 要

事業者名:チョウタラの樹
エリア:岡山市
対象年齢:0~6歳
事業内容:レンタルスペース運営(24時間運営)/イベント・講座/リトミック出張/OKAYAMAこそだてマップWEB運営
Instagram:https://www.instagram.com/choutaranoki/

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