絵本作家とインド料理店の店主。異色の肩書きをもつ「パイシーパイス」店主の田畑智美さんに、ご自身のキャリアやインド料理店をスタートするに至った経緯についてお話いただきました。

プロフィール

インド料理店パイシーパイス
店主 田畑智美 さん

岡山市で生まれ育ち、群馬県で高校時代を過ごす。東京デザイナー学院(現・東京デザイナー・アカデミー)卒業後、22歳で岡山に戻り絵本作家としてデビュー。2017年に夫婦で「パイシーパイス」をオープン。

アーティストとしての原点になった子ども時代

―まずは絵本作家になった経緯から教えてください。子ども時代から絵を描くことが好きだったんですね。

智美さん:
絵を描くことは幼い時から好きで、保育園でも両親からも「すごいすごい!」と絶賛され、絵を描く喜びを感じていました。けれど、兄が2人いる影響と、茶化してくる悔しさから、中学校では少林寺拳法、その後は柔道部に所属しました。体格にも恵まれて、先生から「オリンピックを目指せ」と言われるほど、多くの試合で勝つことができていたんです。でも、次第に勝っても心から喜べなくなっていて。その時に「これは本当にやりたいことではない」と気付きました。

中学3年生の時、父とたまたま草木染めの展示会に行きました。その展示が本当に美しくて、世界観に感銘を受け「やっぱり絵を描いたり何かをつくったりすることが好きだ」と再認識したんです。その展示をしていたのが群馬県在住の草木染めの第一人者で、弟子入りの道があることを知って、泊りがけのワークショップに参加しました。そこで先生に弟子入りを申し出たけれど、「高校だけは出なさい」と言われて群馬県の高校を受験しました。

―岡山から1人で群馬に?!すごい行動力ですね!

けれど、入学前に先生から「高齢だから高校生の面倒をみる自信がない」という手紙が届きました。先生とはそれきり会えず、初めての挫折というか、なんだかすかされた感じがしてやる気をなくしてしまって。「遊んでしまえ」という気持ちで高校時代は過ごしたかな。途中から寮を出て一人暮らしで自炊も始めて。一人で暮らすっていうのは、いい経験にはなりましたね。

―絵本を出版されたのは、どんなきっかけがあったのでしょうか?

智美さん:
高校卒業後、やっぱりデザインを学びたくて東京デザイナー学院に行きました。卒業後は衣料品販売店に就職したものの、22歳の時に母の体調不良で岡山に帰郷。岡山では輸入雑貨やアクセサリーの販売をしながら、自分で描くことを再開しました。たまたま絵本コンクールの公募が目に入って、これだ!と思って応募したら、最終選考に残ったんです。そこから出版の話がきて一冊絵本を出すことになりました。

人生の転機になったインド旅行

―もうすでに異色の経歴を持たれていますが、絵本の出版からインド料理店の開業にはどのようにつながっていくのでしょうか?ぜひ開業秘話を教えてください。

智美さん:
オーストラリアで活動するアーティストがアトリエでチョークアートを教えているのをテレビで見て、これに行きたいと思いました。なんとか準備を進め、30歳のときにワーキングホリデーを利用してオーストラリアに渡りました。そこで出会ったのが今の夫です。日本で結婚して、2人で必死にフルタイムで働いても毎日に充実感がなくて。夫はインド国籍で当時は日本語もあまり得意ではなく、職場環境がずっとよくなかったのもあります。現状を打破するために、2人で何かしたいよねと話していて、「1回インドに行ってみよう」と決意しました。

いざインドに渡ったものの私はニューデリーでお腹を壊し、意識が朦朧とするほどの腹痛に見舞われました。私が少し動けるようになった頃、今度は夫が熱中症で倒れてICUに入ることに……。死にかけて意識がなくなる瞬間もありました。奇跡の生還を果たしましたが、これをきっかけに考え方が変わって「本当にやりたいこと」を2人で話し合うようになったんです。そして、夫の故郷・インドの家庭料理のお店を開くという覚悟が決まりました。今思い返しても、あの経験は人生の転機でしたね。

本場ケララの家庭料理がくれるもの

―「パイシーパイス」さんは実店舗の運営以外にもいろいろされているんですね。改めて活動内容を教えてください。

智美さん:
1つめは「パイシーパイス」店舗運営です。夫の故郷・インドのケララ州の家庭料理を提供しています。野菜料理も多く、素材の味を生かしているので日本人にも受け入れられやすい味になっています。定番のメニューや日替わりのほか、細かなカスタマイズもできますので、自分好みの一杯を楽しんでください。予約やテイクアウトも承っています。日替わりメニューやご予約方法についてはInstagramをご確認ください。

2つめは「料理教室」です。毎月ではないものの、定期的に開催しています。作る料理は本場の家庭料理をベースにした、本格的ながら家庭でも楽しめる内容です。

―岡山のインド料理店として名前が挙がるほど成長されてますね。どのような変化があったのでしょうか?

もう変化だらけですよ。開店以来、世の中の変化や自分のライフスタイルの変化もあって、本当に一時として同じだったことがない気がします。今は「インド好きが集まるお店」という側面もありますね。今後は、料理だけではなく「インドのライフスタイルや文化の伝承」にも力を入れて行くので楽しみにしていてください。

―最後に関わる方やお客様との印象的なエピソードはありますか?

智美さん:
特に印象に残っているのは、体調不良で何も食べられなかったお客様が、元気のない様子でベジカレーをご飯少なめで注文してくださったことがあって。後日「あの後、すごく調子が良くなった」と感謝の電話をくださったことがありました。わざわざ電話で伝えてくれたことに感動したことを覚えています。改めてカレーの力を実感しました。

―それはうれしいですね。私もまたカレーを食べに行きます!変化に富んだ彩り豊かなお話をありがとうございました。

概 要

事業者名:パイシーパイス
エリア:岡山市
対象年齢:なし
事業内容:店舗運営/料理教室の開催
HP:https://spicyspice.shop
Instagram:https://www.instagram.com/spicy_spice_22?igsh=cnQyZXJjd3E3c2ph

最近の口コミ

読者の方から頂いた口コミを紹介!

“インド好きが集う店へ。絵本とインド料理が紡いだ軌跡とは” への1件のコメント

  1. さだっち より:

    言わずと知れた人気カレー店。
    実は2Fに広い座敷があり、子連れでも行きやすいスペースになっています。
    親も子も憩いの場です。

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